IDソリューション

お客さまのウェルビーイングの支援が永い関係の構築につながる。企業と公共サービスの取り組み事例を紹介。

2020年代に入り、企業が顧客のウェルビーイングを訴求するサービスを展開する動きが増えています。その背景には、新型コロナウイルスのパンデミックによる生活様式の変化と、サービスでのつながり(サービス・ドミナント・ロジック:S-DL)を構築する必要性が関係しています。パンデミックはリモートワークやデジタルコミュニケーションの普及を促し、健康や安全への関心を高めました。この変化に対応するため、企業は顧客の心身の健康を支援する施策に注目し始めています。本記事では、ウェルビーイングの概念と重要性を解説し、パンデミック後の顧客行動の変化とS-DLの重要性を考察します。また、具体的な企業や公共サービスの事例を紹介し、ウェルビーイング施策の成功要因や今後の展望について考察します。

ウェルビーイングとは何か

ウェルビーイングという言葉は、身体の健康を超えた広範な幸福の状態を指します。個人の心理的、社会的、そして経済的な側面も含む多面的な概念です。生活の質を向上させ、個人が満足感や多幸感を感じるための基盤となります。くわえて、ウェルビーイングは個人だけでなく、社会全体の持続可能な発展にも寄与すると考えられています。企業がウェルビーイングを重視することは、従業員の満足度や生産性の向上、顧客との強固な関係構築、そして社会的責任の遂行にもつながります。特にパンデミック以降、人々の健康や生活の質に対する意識が高まっているため、企業がウェルビーイングに取り組む重要性はより高まっています。

ウェルビーイングの要素

ウェルビーイングは、以下の要素によって構成されます。

  • 身体的ウェルビーイング:適切な食事・運動・睡眠などの健康習慣を通じて、身体の健康を維持すること

  • 心理的ウェルビーイング:ストレス管理・メンタルヘルスのケア・ポジティブな感情や満足感を得ること

  • 社会的ウェルビーイング:良好な人間関係・コミュニティへの参加・社会的つながりを築くこと

  • 経済的ウェルビーイング:安定した収入・財務管理・経済的安全性の確保

  • 環境的ウェルビーイング:快適で安全な生活環境の維持、自然との調和

これらの要素が保たれることで、個人の全体的なウェルビーイングが向上します。企業がこれらの要素に焦点を当てて施策を実施することで、お客さまの信頼を得ると同時に、社会的にも価値ある存在となることができます。次にこうしたウェルビーイングに関わるサービスの提供が価値を持つ時代的背景について考えます。

ウェルビーイング訴求が求められる背景

ニューノーマル時代の顧客行動の変化

新型コロナウイルスのパンデミックは、世界中の人々の生活に大きな変化をもたらしました。ロックダウンや外出自粛により、多くの人々がリモートワークやオンライン学習に移行するとともに、健康と安全への意識が高まり、衛生習慣や健康管理の重要性が再認識されました。このような変化は、一時的なものではなく、新しい生活様式として定着しています。このようなニューノーマルな生活における行動には以下のような変化が挙げられます。

デジタルシフトの加速

オンラインショッピングやデジタルサービスの利用が急増しました。非接触型のサービスが好まれるようになり、これまで提供されてきたサービスをデジタルトランスフォーメーションする重要性が高まっています。

健康志向の高まり

健康食品・フィットネス機器・ウェルネスサービスなど、健康に関連する商品やサービスの需要が増加しています。生活者は、身体的および精神的な健康を維持するための方法を積極的に探しています。

地域コミュニティの重視

パンデミックにより、地域社会やコミュニティの重要性が再認識されました。地域のビジネスをサポートする動きや、コミュニティ活動への参加が増加しています。

これらの変化は、企業が生活者との関係を再構築するための新たなアプローチを求めています。

サービスとしてのつながり(S-DL)の重要性の高まり

サービス・ドミナント・ロジック(S-DL)は、従来のモノを中心としたビジネスモデルから、サービスを中心としたビジネスモデルへのシフトを提唱する概念です。S-DLは、価値は交換ではなく、共創によって生まれると考えます。顧客と企業が協力し合い、サービスを通じて価値を共に創り出す姿勢を持つことが重要です。(参考記事:アップルとApple IDに学ぶ、サービス・ドミナント・ロジック(S-DL)への道標

モノからサービスへのシフト

従来のモノ中心のビジネスモデルでは、製品の品質や機能が主な競争要因となっていました。しかし、現代の生活者は単なる製品の購入だけでなく、サービスや体験を求めています。例えば、スマートフォンの販売だけではなく、アプリやクラウドサービスを提供することで、顧客との長期的な関係を築くことが求められています。

顧客体験とエンゲージメントの強化

S-DLのアプローチにより、企業は顧客体験を重視し、エンゲージメントを強化することができます。これにより、お客さまは単なる消費者ではなく、価値共創のパートナーとなります。例えば、フィットネスアプリを提供する企業が、ユーザーの健康管理をサポートし、個別のフィードバックやコミュニティ機能を通じてエンゲージメントを高めることで、顧客との深いつながりを築くことができます。

このように「顧客行動の変化」と「企業と生活者の新しいつながり方の重要性の高まり」の2つの側面から、ウェルビーイングを訴求する施策の採用が増えています。次に実際の企業の事例と、参考にすることができる公共サービスが提供するウェルビーイング施策の事例を確認します。

ウェルビーイングを訴求する施策の具体例

企業の事例紹介

日本企業のウェルビーイングを訴求する施策の具体例は、以前の記事(大手食品・日用品メーカーがはじめたECサイトと共通IDを活用したサービス・ドミナント・ロジック(S-DL)への挑戦)でも取り上げた、味の素とライオンの施策を紹介します。両社ともに「身体的なウェルビーイング」を商品と情報やテクノロジーを使って支援することで、お客さまとの永い関係づくりを担う施策となっています。

味の素「aminoステップ®」

パーパスに「アミノサイエンス®により人・社会・地球のWell-beingに貢献する」を掲げる味の素グループは、2021年4月に生活改善を提案する情報提供を目的としたサービス「aminoステップ®(https://aminoindex.jp/aminostep-lp/)」を開始し、スマートフォン用アプリの提供をはじめました。aminoステップでは、世界の食文化を探すウォークラリーへの参加や食事の記録、食文化やアミノ酸に関するクイズへの参加など、生活改善や健康のための知識を得ることができるウェルビーイングのためのコンテンツを用意し、またそのいずれの接点においても各アクションごとにマイル(ポイント)を付与することも含めて、生活者との継続的なつながりを実現しています。

加えて、その先には同社が提供するがんや生活習慣病のリスク検査サービス「アミノインデックス®(https://www.ajinomoto.co.jp/products/aminoindex/)」を案内することで、より具体的に生活者のウェルビーイングをサポートするサービスポートフォリオを構築しています。また本検査サービスを受診することで、アプリ内には受診者特典のマイページが用意され、検査結果をもとに生活改善プログラムが提案されます。

ライオン「ORALFIT」

パーパスに「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する」を掲げるライオンが提供する「ORAL FIT(https://oralfit.lion.co.jp/)」は50歳を過ぎた頃から起こりうる「むせる」「話しづらい」「噛みづらい」などの、口周りの筋力低下が原因となる問題に対処するためのフィットネスサービスです。スマートフォンのアプリケーションを通じて、1日10分、2ヶ月間のトレーニングを行うことで、口周りの機能改善を目指します。口腔内の健康を維持するための日常的な習慣づくりに貢献するウェルビーイングな施策です。

公共サービスの事例紹介

ウェルビーイング施策は企業だけでなく、世界の公共サービスでも取り入れられています。それらでは、「身体的・心理的なウェルビーイング」に加えて「社会的」「経済的」「環境的」なウェルビーイングをサポートする視点が入っている点が興味深く、またこれからの企業活動にも参考になります。

ベルギーのアートによるウェルビーイング

ベルギーの「CENTRALE for contemporary art(https://centrale.brussels/)」は、現代アートを通じて市民の心理的ウェルビーイングを促進しています。多様なアートプログラムや展示を通じて、人々が創造性を発揮し、心の健康を向上させることを目指しています。

スコットランド森林局の森林浴によるウェルビーイング

スコットランド森林局が運営する「Branching Out(https://www.forestry.gov.scot/forests-people/health-strategy/branching-out)」は、自然療法を通じて精神的および身体的な健康を支援するプログラムです。森林活動を通じて、参加者が自然の中でリラックスし、ストレスを軽減することを目的としています。

イギリスの経済的なウェルビーイング

イギリスの「Financial Shield(https://www.financial-shield.uk/)」は、経済的なウェルビーイングを支援するプログラムです。個人や家庭が経済的なストレスを軽減し、健全な財務管理を行うためのアドバイスやサポートを提供しています。

ウェルビーイング施策の成功要因

深い顧客理解とパーソナライゼーションによる高い顧客体験の提供

成功するウェルビーイング施策のもっとも大切なポイントは、顧客を深く理解し、そのニーズに合わせてパーソナライズされたサービスを提供することです。味の素の「aminoステップ」では、個々のお客さまの生活スタイルや健康状態の記録を促しつつ「アミノインデックス」での検査につなげて、最適な提案ができるようにサービスを整えています。ライオンの「ORALFIT」は、お客さまの口腔ケアの習慣に応じた製品やアドバイスを提供しています。

技術の活用(デジタルツール、AI)

デジタルツールやAIを活用することで、ウェルビーイング施策の効果を最大化することができます。例えば、味の素は専用アプリを通じて、ユーザーの健康データを収集・分析し、最適なアドバイスを提供しています。ライオンも、デジタルプラットフォームを使って、ユーザーが効果的に口腔ケアを学び、実践できるようサポートしています。

コミュニティの形成とサポート

コミュニティの形成もウェルビーイング施策の成功のための大きな鍵となります。顧客同士や施策に関わる企業スタッフが交流し、サポートし合えるコミュニティを形成することです。長期的に取り組む必要があるウェルビーイングな取り組みを相互に支援しながらモチベートしていく基盤となるとともに、企業と生活者の永い関係づくりにも寄与することになります。

ウェルビーイング施策に取り組む企業に求められる姿勢

お客さまのウェルビーイングを支援するためには、自社商品やサービスの提供に留まらず、お客さまの生活全体を支援する包括的なアプローチが求められます。そのためには、味の素やライオンの事例に学ぶとともに、世界の公共サービスが展開する「社会的」「経済的」「環境的」なウェルビーイング施策の視点を持つこともとても有益となります。包括的な視点でウェルビーイング施策を提供することは、製品ではなく顧客体験を、機能ではなくソリューションを提供しようというS-DLのコンセプトにも自然と接近する取り組みになります。お客さまの健康と幸福を最優先に考えた施策を展開することは、企業が生活者との深いつながりを築き、持続可能な成長を実現する道標となります。

お知らせ

深い顧客理解と高い顧客体験を提供するための「IDソリューション」を提供しています

App Unityでは、店舗、ECサイト、コミュニティサイトなど、さまざまなチャネルのログインID・顧客情報・ポイントを独自開発することなく低価格で連携するための「IDソリューション」を提供しています。お客さまの深い理解と、永く親密な関係を続けていくための、S-DL(サービス・ドミナント・ロジック)構築のための道標の第一歩となるID統合を支援していますので、活用・検討の際にはぜひご相談ください。

■資料請求・お問合せ:https://service.appunity.jp/contact

【無料】S-DL診断アプリをお試しください

貴社の業種、提供商品・サービス、課題、理想とする姿を入力いただくと、社会の変化に配慮したサービス・ドミナント・ロジックの構築に向けた施策内容の提案や、施策に即した実際の事例を紹介する「S-DL診断アプリ」を試験公開しています。ご登録が必要となりますが、無料で実施できますので、ぜひお試しください。

category:

関連セミナー

関連記事

執筆者紹介

舟久保 竜

総合マーケティング会社で23年間、NBメーカーの商品開発・販促企画のアイディア創出のための調査から、クチコミマーケティングの企画・施策実行までの支援を行う。新しいモノが買われなくなるレコノミーの時代の到来を実感し、フィードフォースに加入。統合IDとCDPを活用した人間中心のマーケティングのためのSDL構築と、生活者と企業の新しい生態系「IDecosystem」の実現を目指す。

まずはお気軽に資料請求・お問い合わせください

IDソリューション