大手食品・日用品メーカーがはじめたECサイトと共通IDを活用したサービス・ドミナント・ロジック(S-DL)への挑戦

ポストクッキー時代の企業と生活者のつながり方において、「G-DL(グッズ・ドミナント・ロジック)」から「S-DL(サービス・ドミナント・ロジック)」への移行は大切な視点です。特に食品・日用品メーカーといった日常的にモノを購入してもらうことを生業としていた企業にとって、新しいモノが売れにくくなるこれからの社会で生活者と継続的につながり続けるためのサービスの開発・提供が求められ、さまざまな挑戦がはじまっています。今回のブログでは、ECサイトやIDを活用して先進的なS-DLに取り組んでいる大手メーカーを取り上げ、そのチャレンジの内容を整理し、考察します。
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アップルとApple IDに学ぶ、サービス・ドミナント・ロジック(S-DL)への道標
- 味の素グループが取り組む「生活者の食と生活に寄り添う」ためのサービス・ドミナント・ロジック
- AJINOMOTO IDによって、コミュニティや冷凍食品サブスクリプションなど味の素エコノミーへとつながりが広がっていく
- 毎月800万人が訪れる「AJINOMOTO PARK」に、数百人規模のコミュニティを併設*
- 生々しい生活のワンシーンを切り取ったECサイト「あえて、」でサブスクリプションによる継続的なつながりを構築する
- 世代を横断した香りと口腔ケアサービスを共通IDでつなげ、長期的な関係構築を目指すライオンのS-DLの取り組み
- 「by me」自分だけの香りを楽しむファブリックケアの新しい体験を提供
- 「おくち育」子どもの成長に合わせたオーラルケアプログラムをモノとサービスを合わせて提供
- 「ORAL FIT」口周り筋力低下が気になる人に向けてオーラルフィットネスサービスを提供
- 世代を横断したサービス、ECサイトを共通IDでつなげることで見えてくること。縦型消費社会に対応するためのS-DL。
- 味の素とライオンに学ぶ、小規模・特定場面に限定したS-DLがもたらす大きな価値
- お知らせ
- S-DL構築の第一歩「IDソリューション」を提供しています
味の素グループが取り組む「生活者の食と生活に寄り添う」ためのサービス・ドミナント・ロジック
パーパスに「アミノサイエンス®により人・社会・地球のWell-beingに貢献する」を掲げる味の素グループは、2021年4月に生活改善を提案する情報提供を目的としたサービス「aminoステップ®」を開始し、スマートフォン用アプリの提供をはじめました。aminoステップでは、世界の食文化を探すウォークラリーへの参加や食事の記録、食文化やアミノ酸に関するクイズへの参加など、生活改善や健康のための知識を得ることができるライトなコンテンツを用意し、またそのいずれの接点においても各アクションごとにマイル(ポイント)を付与することも含めて、生活者との継続的なつながりを実現しています。

加えて、その先には同社が提供するがんや生活習慣病のリスク検査サービス「アミノインデックス®」を案内することで、より具体的に生活者の健康をサポートするサービスポートフォリオを構築しています。また本検査サービスを受診することで、アプリ内には受診者特典のマイページが用意され、検査結果をもとに生活改善プログラムが提案されます。アプリ内でプログラムの進捗を報告することで、またマイルが獲得でき、、、。などなど、味の素とのつながりが強く深くなる好循環が生まれるS-DLがこのように提供されています。
AJINOMOTO IDによって、コミュニティや冷凍食品サブスクリプションなど味の素エコノミーへとつながりが広がっていく
このaminoステップへの登録およびログインには、味の素グループの共通ID「AJINOMOTO ID」が使われています。この共通IDによって、生活者は味の素グループが提供する各種サービスをシームレスに利用することができます。また企業側にとっては、各種サービス接点において取得したお客様の情報を一元管理・分析でき、それらをもとにまだ未体験の商品やサービスの体験を促すことで、より深いつながりと高い顧客体験を提供することが可能となります。以下は、現在のAJINOMOTO IDの対象となっているサービスの一覧です。

味の素グループが、商品・ブランド・役割・機能ごとに提供している9つのサービスが並びます。この中から、オウンドメディア・コミュニティサイトの「AJINOMOTO PARK」と、ECサイトの「あえて、」に注目します。
毎月800万人が訪れる「AJINOMOTO PARK」に、数百人規模のコミュニティを併設*
2023年3月、味の素グループは1960年代にはじめたレシピ冊子からの流れを組むAJINOMOTO PARKにコミュニティ「味のもト〜ク」を新たに開設しました。彼らはこのコミュニティの役割を『凝縮された人たちとつながる場所』と位置付けます。

コミュニティでは規模を求めるよりも、少人数であっても双方向の矢印を戻してくれる顔の見える人たちとのコミュニケーションを通して、生活者がまだ気づいていないこと、困っていることをコンテンツの中に還元したり、コンテンツでは解決できないことはサービスや製品開発に活かすことを目的としています。共通IDによって取得する数百万人規模の定量データに、数百人規模の生々しい定性データを加えることで、自分たちの役割を見つけること、新たに知ったより生活を豊かに進化させる方法を実現し、教えていくこと。こうしたエコシステム(生態系)が構築できていることがわかります。
■こちらの記事もご覧ください
ポストクッキー時代の生活者とのつながり方。サードパーティクッキーの代替策と新しく生まれる生態系とは。
参考:オレンジページ「ウェルビーイングの鍵はカスタマーサクセスにあった!」
*2023年9月公開記事を参照
生々しい生活のワンシーンを切り取ったECサイト「あえて、」でサブスクリプションによる継続的なつながりを構築する
味の素グループは、2024年1月から「あえて、」という特徴的なネーミングの冷凍弁当の定期宅配ECサイトをスタートしました。

このサービスでは、栄養バランスのとれたごはんとおかずを盛り付けた20種類の冷凍食品を提供しています。1日に必要な食物繊維と食塩、野菜の3分の1をとれるように栄養バランスに配慮し、会員登録をして3種類のコース(6食、12食、20食)を選ぶと、2~4週間おきに届く仕組みとなっているということですが、ECサイトに訪れるとまず目につくのが「あえて、」というサイト名と、ファーストビューで繰り返される単身・共働き世帯の生活に寄り添ったコンセプト数点の説明です。
前述のコミュニティと同様に、数百万の世帯を対象とするのではなく、「あえて、」なオケージョンを共有できる限定された家族・世帯に向けたECサイト・サービスであることが感じられます。ECサイトやコミュニティ、そしてそれらを共通IDでつなげることで、生活の深い理解を実現し、長くつながりたいと思えるサービスを提供する、味の素グループのS-DLへの取り組みと挑戦が見えてきます。
世代を横断した香りと口腔ケアサービスを共通IDでつなげ、長期的な関係構築を目指すライオンのS-DLの取り組み
ライオンの共通IDを使ったS-DLへの取り組みを確認するととても興味深い仮説が見えてきます。
ライオンが提供する共通ID「LION ID」で利用可能なサービスは現在(2024年3月時点)で、「by me」「ORAL FIT」「おくち育」の3サービスです。いずれもライオンが展開する商品カテゴリに関わる商品を提供するECサイトですが、そこにユニークなサービスを加えることでS-DLへの移行を目指しています。

「by me」自分だけの香りを楽しむファブリックケアの新しい体験を提供

「by me」は、好きな香りを自由にカスタマイズできる無香性の柔軟剤「ベースソフナー」と、専用の「香り付け用エッセンス」と合わせて使用することで、その日の気分や洗濯物に合わせて香りを変えることができる洗濯・ファブリックケアの体験を提供しています。また柔軟剤としての利用方法に加えて、ミストとして使えるボトルも用意し、香りの楽しみ方の幅を広げています。生活者が毎日の洗濯をよりパーソナライズし、楽しめるベネフィットを提供することで長期的にライオンの柔軟剤を愛用してもらうためのS-DLを構築しています。また、香りのブレンドをAIが提案する商品ラインナップや、定期便サービスの提供など、長く使用してもらうための工夫を広げています。
「おくち育」子どもの成長に合わせたオーラルケアプログラムをモノとサービスを合わせて提供

ライオンは2023年4月に、子どもの成長段階に合わせ、きちんとした歯みがき習慣づくりや、良い歯ならびの土台づくりを支援するオーラルケアプログラム「おくち育」を専用ECサイトにおいて提供を開始しました。その第一弾として6歳〜12歳の歯の生え変わり期の子ども向けにグミで噛む力を育み、ガムで噛む力を チェックし、「おくち育会員サイト」で「歯ならびチェック」ができる3点がセットになった「おくち育 噛もっと!」というモノとサービスのセットを販売しています。これまで、日本人のオーラルケアを歯ブラシや歯磨き粉でサポートし続けてきたメーカーが、サービスを加えてより高い顧客体験を提供するためのS-DLを展開しています。
「ORAL FIT」口周り筋力低下が気になる人に向けてオーラルフィットネスサービスを提供

「ORAL FIT」は50歳を過ぎた頃から起こりうる「むせる」「話しづらい」「噛みづらい」などの、口周りの筋力低下が原因となる問題に対処するためのフィットネスサービスです。スマートフォンのアプリケーションを通じて、1日10分、2ヶ月間のトレーニングを行うことで、口周りの機能改善を目指します。本サービスも、ライオンが提供し続けてきた歯ブラシや歯磨き粉といった商品では解決できない課題に、サービスを用いてアプローチするS-DLです。
世代を横断したサービス、ECサイトを共通IDでつなげることで見えてくること。縦型消費社会に対応するためのS-DL。
自分や家族のファブリックケアに取り組む人に届ける「by me」。小学生の子どものオーラルケアが気になる人に向けた「おくち育」。口周りの筋力低下が気になりはじめた人が取り組む「ORAL FIT」。一見するとあまり対象者が被らないのではないかと感じてしまう、これらの3つのサービスをライオンは共通IDを用いてつなげています。その背景や目的を推測すると、ライフコースのある場面で表面化する生活課題に対して、ライオンが長い関係構築を行いながら都度支援するためのS-DLが見えてきます。
子どものオーラルケアに一生懸命だった人は、いずれ自分の口周りの課題に対応する必要が出てくるでしょう。人口減少と長寿化が進み、人口の年齢構成比が縦に細く伸びてきた日本の市場を「縦型消費社会」と呼ぶようになりました。LION IDを活用して3つのサービスをつなげる目的は、縦型消費社会に対応する超長期的な関係構築のためのS-DLなのではないでしょうか。また、このように長期的な顧客体験を観察することで、今はまだ表面化していないある場面での生活課題も見えてくる可能性があります。S-DLは長期間の深い顧客理解にもつながり、新たな市場・商品・サービスを発見し開発するためのきっかけにもなっていきます。
味の素とライオンに学ぶ、小規模・特定場面に限定したS-DLがもたらす大きな価値

味の素グループでは大規模なオウンドメディアと小規模のコミュニティ、それから特定の生活シーンを切り取ったECサイトを共通IDでつなげ、S-DLを構築しています。ライオンはライフコースのあるイチ場面で発生する生活課題に対応するサービスやECサイトを共通IDでつなげていました。S-DLの大切な要素として、この両社のように小規模の市場、特定場面で生まれる課題をつなげていくことで、深い顧客理解と高い顧客体験への提供を実現していく視点を持つこと、それによって生活者と長期的な関係構築を行う視点を持つことがあると学びました。
お知らせ
S-DL構築の第一歩「IDソリューション」を提供しています
App Unityでは、店舗、ECサイト、コミュニティサイトなど、さまざまなチャネルのログインID・顧客情報・ポイントを独自開発することなく低価格で連携するための「IDソリューション」を提供しています。顧客との永く親密な関係を続けていくための、S-DL(サービス・ドミナント・ロジック)構築のための道標の第一歩となるID統合を支援していますので、活用・検討の際にはぜひご相談ください。
■資料請求・お問い合わせ:https://service.appunity.jp/contact
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執筆者紹介

舟久保 竜
総合マーケティング会社で23年間、NBメーカーの商品開発・販促企画のアイディア創出のための調査から、クチコミマーケティングの企画・施策実行までの支援を行う。新しいモノが買われなくなるレコノミーの時代の到来を実感し、フィードフォースに加入。統合IDとCDPを活用した人間中心のマーケティングのためのSDL構築と、生活者と企業の新しい生態系「IDecosystem」の実現を目指す。























