ポストクッキー時代の生活者とのつながり方。サードパーティクッキーの代替策と新しく生まれる生態系とは。

サードパーティクッキーの廃止は直近の大きなマーケティング課題と認識されています。各社が対応に追われる中、この環境を新たな顧客とのつながり方を模索する機会にしようとする取り組みもはじまっています。本記事では、改めてサードパーティクッキーが廃止される背景から、代替策として取り組まれていることとその事例、それらによって推進される企業と生活者による新たなエコシステムについて整理を行い、仮説とともにお伝えします。
サードパーティクッキーの状況
サードパーティクッキーは、ユーザーが訪れた異なるWebサイト間でユーザーの行動を追跡し、そのデータを利用してターゲティング広告を表示するために使用されてきました。クッキーの活用は高い広告効果をもたらし、企業やマーケターにとって非常に価値があるものでしたが、ユーザーのプライバシー侵害につながるとの懸念が広がり、以下のような議論・対応が進んでいます。

プライバシーへの懸念
オンラインでの活動が広範囲に渡って追跡され、その情報がマーケティングに活用されることに対して多くのユーザーが不快感を覚えるようになりました。
規制の強化
前述のデータ保護法の厳格化にともない、ユーザーの同意なしに個人のデータを収集・利用することを制限するようになりました。
ブラウザの対応
Appleは自社のブラウザ「サファリ」で、2017年にサードパーティクッキーを制限する取り組みをはじめ、2020年には初期設定で全面禁止しました。日本国内のパソコン向けブラウザ市場で6割を超えるシェアを握るGoogleも、自社ブラウザ「クローム」で2020年にサードパーティクッキーを廃止する計画を打ち出し、2024年後半から段階的に全廃を進めていくと発表しています。
サードパーティクッキーの廃止は、オンラインプライバシーを重視する現代のトレンドに沿ったものであり、これによりインターネット上のプライバシー保護の強化が進行していきます。一方で、クッキーを駆使して高い効果を実現し右肩あがりの成長を続けてきたネット広告は転換期を迎えており、クッキーに変わる生活者との新たなつながり方が模索されています。
サードパーティクッキーの代替策
前述の通り、2024年後半にはこれまでのようなブラウザ上の行動ターゲティング広告はほぼ不可能になります。Googleが2019年に行った調査では、サードパーティクッキーを利用しない広告は、利用した場合と比較して広告効果が半減することが報告されています。生活者の深い理解と、高い顧客体験を実現するために以下のような代替策が検討・展開されようとしています。

・プライバシーサンドボックス
ユーザーのオンラインプライバシーを保護しながら、広告業界にとって必要なターゲティングと広告測定の機能を維持するための技術です。この取り組みは、ユーザーのブラウジング履歴を個別に追跡することなく、広告のパーソナライゼーションを可能にします。ユーザーを類似の興味を持つグループに匿名で分類し、そのグループ情報をもとに広告を配信します。これによって、個々のユーザーのプライバシーが保護されつつ、広告主は関連性の高いオーディエンスにリーチすることができます。
・文脈ターゲティング
ユーザーの興味や行動履歴ではなく、Webページのコンテンツやテーマに基づいて広告を表示する手法です。例えば、料理関連の記事に関するWebページには食品や調理器具の広告を表示するなど、個人を特定する情報に依存しない形で、閲覧しているコンテンツと関連性の高い広告を表示することができます。
・共通ID
オンラインの異なるサービスやプラットフォーム間でユーザーを識別するために使用される共通の識別子です。媒体社などがユーザーの同意を得た上でメールアドレスなどを暗号化して広告主やネット広告入札システムなどと連携。購買履歴などを基に広告を表示することができます。ユーザーの同意を得た情報をもとに生成されるため、ターゲティング精度が高いのが特徴ですが、メールアドレスの提供が必要であり、ユーザーにとってのハードルが高いという課題もあります。
・ファーストパーティデータ:ID統合
自社の顧客やWebサイト訪問者に関連する情報を収集・保有する企業独自データです。顧客の行動や選好に関する情報を含み、有効に活用することによってより精緻なマーケティングの実行や商品開発への活用を目的としています。加えて、分散されたファーストパーティデータを統合するID統合に取り組む企業も増えています。
ご覧いただいたように、サードパーティクッキーの代替策はプラットフォーマーや媒体社による代替策と、企業が自ら収集するデータを活用した代替策が検討されています。我々は今後もデータ保護に関する規制が厳格化される可能性も見据えて、ファーストパーティデータの活用に注目しています。ファーストパーティデータを活用した、企業と生活者の新しいつながり方の事例をご紹介します。
ファーストパーティデータ活用・ID統合による企業と生活者の新しいつながり方の事例
2020年代に入り、ポストクッキー時代を見据えて食品、飲料、トイレタリーなどのメーカーのサイトや、百貨店やホームセンターなどの小売のサイトにて、自社の持つ複数のブランドサイトを横断して利用できる企業独自の「ブランドID」を提供するケースや、ファーストパーティデータを積極活用するケースが増えています。企業が取り組みをはじめた顧客との新しいつながり方の事例を紹介します。
ネスレ日本株式会社

ネスレグループでは、サードパーティクッキーの活用が難しくなっていくことを鑑みて、自社でファーストパーティデータを保有し、直接ブランドと生活者がつながる関係を作ることを目的として、2025年までのデジタル戦略を策定しています。具体的に、2025年までに「Eコマース比率を25%」「デジタル広告投資を70%」そして「4億のファーストパーティデータ」を保有することを目標としています。
味の素グループ

2022年12月より、グループ内の複数サイトのID、会員情報を一元化しシングルサインオンでのアクセスが可能になりました。多様化する食や健康に関する生活者の価値観を、直接的なつながりの強化によって理解し、嗜好やライフスタイルに合わせた体験価値の提供を目指しています。
株式会社資生堂

2022年9月より、新会員サービス「Beauty Key(ビューティーキー)」を開始。会員制度「花椿CLUB」、ECサイト「watashi+(ワタシプラス)」、各ブランドの会員サービス、小売店の顧客台帳など、複数の会員サービスに分散されていたID(顧客データ)を統合しました。これにより、顧客理解と資生堂・顧客・取引先をつなげるプラットフォームとしての活用を推進し、資生堂が目指す一人ひとりの健康美を実現する次世代CX(顧客体験)を実現していきます。
いずれも、分散していた顧客接点を統合し、直接顧客とつながること。そして、緊密につながった顧客を深く理解し、顧客体験の価値を高めていくことが目的だと感じました。企業と生活者のIDをキーにしたつながりが今後も増えていくことを予感させます。
IDによる新しい生態系:IDecosystemが広がっていく
34年ぶりに日本マーケティング協会がマーケティングの定義を刷新
2024年1月にJMA(日本マーケティング協会)がマーケティングの定義を刷新しました。新しい定義を推敲するためのキーワードは「企業と顧客の価値共創」「ステークスホルダーとの関係性の構築」「社会課題の解決」「持続的成長」などが挙げられていました。ファーストパーティデータの活用と、ID統合による深い顧客理解と、それを反映した高い顧客体験の提供は新しいマーケティングの定義とも呼応するものになっていると感じます。IDによってのつながりは、企業と生活者がお互いを理解し、一緒に持続可能な生活を考えていくための新しい生態系(IDecosystemと命名)となっていくことを想像しています。
参考:マーケティングの定義

IDecosystem:IDによる生態系とは
いわゆる生態系(エコシステム)とは以下のシステムおよびサイクルを指します。
役割分担を持つシステムがあること(食物連鎖)
先に発見したものが、まだ気がついていないものに、教えるシステムがあること(遺伝・進化)
これを企業の社会的役割として読み替えると以下になります。
社会において、役割、分担を持つこと
社会よりも先に素敵な(持続可能な)生活の仕方の考え方と道具を発見し、提案し、提供すること
JMAが刷新したマーケティングの定義に則して、これから「企業と顧客の価値共創」「社会課題の解決」「持続的成長」をマーケティングで実現していくために、以下のようなIDによるエコシステムを構築する必要があると考えています。
社会における、生活者と企業の役割、分担をIDをキーとして理解、把握できること
社会よりも先に素敵な(持続可能な)生活の仕方の考え方と道具をIDで繋がったもの同士が互いに、発見し、提案し、提供すること
ポストクッキー時代の生活者とのつながり方は、IDによる企業と生活者の新しい生態系「IDecosystem」として広がっていくのではないでしょうか。
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執筆者紹介

舟久保 竜
総合マーケティング会社で23年間、NBメーカーの商品開発・販促企画のアイディア創出のための調査から、クチコミマーケティングの企画・施策実行までの支援を行う。新しいモノが買われなくなるレコノミーの時代の到来を実感し、フィードフォースに加入。統合IDとCDPを活用した人間中心のマーケティングのためのSDL構築と、生活者と企業の新しい生態系「IDecosystem」の実現を目指す。























