ShopifyでLTVを最大化する顧客分析 ── CDP的データ統合・活用と施策設計

LTVの最大化とCDP的な発想の必要性
EC担当者の大きな悩みのひとつに、新規顧客の獲得コストの上昇があります。競合が多く、広告費が高騰していく状況においては「いかに効率的にリピートを生み、顧客の生涯価値(LTV:ライフタイムバリュー)を最大化するか」が重要なテーマになっています。新規顧客を増やす施策はもちろん大切ですが、収益性を安定させる鍵は既存顧客の理解と関係性の強化にあります。「顧客を理解し、再購入やアップセルにつなげる」ことが、持続的な成長に直結します。
このとき必要になるのがCDP(Customer Data Platform)的な発想です。購買履歴を眺めるだけでなく、複数チャネルに散らばったデータを統合し、顧客単位で理解を深め、そこから施策設計につなげる。ShopifyはCXP(Customer Experience Platform)としてだけでなく、CDP的な顧客理解の基盤としても活用可能です。本記事では、Shopifyのストア分析に用意されたレポートを起点に、LTV最大化につなげる分析と自動化のステップを整理します。
参考記事:ShopifyをCXP/CDPとして活用するには?顧客体験をつなぎなおすための実践的アプローチ
LTV最大化のために活用したい顧客分析フレーム
既存顧客の理解を深めるために、Shopifyの購買データで実践しやすく、施策への落とし込みがしやすいフレームを3つに絞って紹介・説明します。以下は、Shopifyのメニュー「ストア分析」→「レポート」から利用することができます。
フレーム | レポート名 | 目的 | 主要データ |
|---|---|---|---|
RFM分析 | RFM分析に基づくお客様分析 | Recency・Frequency・Monetaryで顧客をランク付けし、セグメントごとの施策を最適化 | 購入日、累計購入回数、累計購入金額 |
コホート分析 | 顧客コホート分析 | 初回購入月などで顧客群を分け、一定期間の再購入率や売上を追跡 | 初回購入日、以降の購入履歴 |
クロスセル分析 | 一緒に購入されたアイテム | 一緒に買われやすい商品の組み合わせを特定し、クロスセルやセット販売に活用 | 同時購入商品、注文ID |
分析から施策設計へ、レポートの活用方法
レポートをどのように読み解き、どのように施策につなげるかを考えます。
1. RFM分析に基づく顧客セグメント
RFM分析では、顧客を直近購入日・購入頻度・累計購入金額という3つの指標で分類します。この分析からは、顧客がどの程度アクティブにブランドと接触しているかが浮かび上がります。例えば、直近で購入しており頻度も高い顧客はロイヤル層として捉え、限定特典や会員向けイベントを案内することでさらなるロイヤル化を促進できます。一方で、最後の購入から長く経過しており購入頻度が低い顧客は休眠リスクが高く、復活施策としてクーポン配布やリマインド配信を組み合わせることが効果的です。こうした顧客ごとの温度感を把握することが、LTV最大化に向けた最初のアクションとなります。

2. コホート分析で打ち手の効果を追跡する
コホート分析は、初回購入月ごとに顧客をグルーピングし、その後の再購入率や売上を追跡するものです。これにより、どの獲得施策やキャンペーンが長期的な顧客維持につながっているかを定量的に把握できます。例えば、特定の月に実施したキャンペーンで獲得した顧客が3ヶ月後の再購入率で他月より高い場合、その施策は顧客定着に寄与していると評価できます。逆に短期間で離脱が多い場合は、獲得チャネルや初期の体験設計を見直すべきだと判断できます。コホート分析は「顧客になってからどのように動くか」を追跡する点で、施策効果を検証する強力なツールです。

3. 一緒に購入されたアイテムからクロスセルを設計する
「一緒に購入されたアイテム」レポートは、クロスセルやバンドル販売の可能性を探るために有用です。このレポートでは、同じ注文で頻繁に組み合わせて購入されている商品が明らかになります。例えば、コーヒー豆と焼き菓子が高い割合で同時購入されている場合、これらをセット化した商品を提供することで購買単価を引き上げられます。また、購入行動の相関を把握することで、オンラインストアの商品ページに関連商品を表示するなど、体験の最適化にもつなげられます。クロスセルは単なる売上拡大策ではなく、顧客にとって便利で価値のある提案として機能する点が重要です。

ShopifyをCDP的に活用するためのデータ統合と価値を高める情報設計
Shopifyのレポートから得られる示唆をさらに深めるには、データの拡張と統合が効果的です。Shopifyに蓄積される基本的な顧客・商品・注文データに加えて、追加の情報を組み合わせることで、分析の精度は大きく高まります。
顧客属性の拡張(メタフィールド・メタオブジェクトの活用)
Shopifyのメタフィールドやメタオブジェクトを利用すれば、標準項目にない情報を柔軟に追加できます。例えば、会員ランクや嗜好カテゴリ、あるいはメール配信の同意状況といった情報を顧客ごとに保持すれば、RFM分析で顧客を分類した際に「ゴールドランクかつスイーツ嗜好のロイヤル顧客」というように、より解像度の高い理解が可能になります。この情報を基にすれば、セグメントごとに異なるメッセージングや施策を設計でき、LTVの最大化につながります。
商品属性の拡張(メタフィールド・メタオブジェクトの活用)
利用シーン(朝食用、ギフト用、自宅用)、継続性(消耗品か単発か)、価格帯、原材料特性といった情報を商品ごとに設定すれば、「一緒に購入されたアイテム」レポートで見つかった相関関係の理由を説明できるようになります。例えば、ギフト用に分類された商品が特定のコホートで高い再購入率を示す場合、季節イベントやキャンペーンでの重点投入が有効であることが見えてきます。
参考記事:Shopifyを「CDP」のように活用する──メタフィールドとAPIで実現する顧客体験基盤(CXP)のつくり方
チャネルを横断したID統合(IDソリューションの活用)
App Unityが提供する Shopify カスタムアプリ「IDソリューション」を活用することで、店舗・EC・コミュニティ・アプリといった複数チャネルのデータをShopifyに集約することがより容易になり、さらに顧客像を明確にする分析やマーケティング施策の実行が可能です。カンロ株式会社の事例 では、ECサイトとコミュニティのIDを統合することで、ファン育成とLTV向上を同時に実現していますので、参考にされてください。
LTVを高める、Shopifyで行う顧客体験のマーケティングオートメーション
分析とデータ統合から導かれたインサイトを迅速に施策に変換できるのが、Shopifyの大きな強みです。Shopify Flowを利用すれば、顧客属性や購入行動に基づいた自動タグ付け、メール送信などを簡単に設定できます。例えば、RFM分析でロイヤル層と判定された顧客に自動で「VIPタグ」を付与し、特別オファーをメール配信する、といった一連の処理を人手を介さず運用できます。クロスセル対象商品を購入した顧客に対しては、次回購入時に関連商品のクーポンを発行するといった応用も可能です。
加えて、アプリエコシステムの活用によって自動化の幅は広がります。CRM PLUS on LINEを利用すれば、LINEを使ってShopifyの顧客属性に応じたメッセージ配信が実現できます。Omni HubはPOSシステムとShopifyをつなぎ、実店舗とECのデータを統合してオムニチャネル施策を自動的に展開できます。これらを組み合わせることで、マーケティングへの負荷を軽減しながら、顧客接点全体を通じた一貫した体験を提供することができます。
参考記事:Shopify Flowとアプリ活用で実現する「即戦力CXP」 ── 自動化が変える顧客体験設計
LTVを最大化する顧客分析とは
Shopifyのストア分析レポートで得られる分析を土台にしつつ、顧客属性や商品属性の拡張、チャネル横断IDの整備、外部ツールとの連携を組み合わせることで、ShopifyはCDP的に活用できる基盤へと進化します。重要なのは「どの分析に、どの追加データを掛け合わせると価値が高まるか」を設計し、段階的に取り入れていくことです。これにより、単なる数字の把握から一歩進んだ顧客理解と施策設計が可能になります。
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App Unity IDソリューションとは
店舗・ECサイト・コミュニティ・アプリのID/ファーストパーティデータを低コストで統合・連携。多極化する顧客接点を横断して、ログインID・ポイントの共通化や統合した顧客情報を元にマーケティングに関わる企画・施策実行ができるようになります。
App Unity IDソリューションの特徴
Shopifyに必要な機能を持たせて一元管理。独自開発することなく、開発コストを削減。シンプルかつクイックにID統合・顧客理解・顧客体験の向上を実現します。
ID連携やデータ連携などに関してID統合・シングルサインオン周りでの課題がございましたら、ぜひ一度お話をお聞かせください。お気軽にお問い合わせ・資料請求ください。
執筆者紹介

舟久保 竜
総合マーケティング会社で23年間、NBメーカーの商品開発・販促企画のアイディア創出のための調査から、クチコミマーケティングの企画・施策実行までの支援を行う。新しいモノが買われなくなるレコノミーの時代の到来を実感し、フィードフォースに加入。統合IDとCDPを活用した人間中心のマーケティングのためのSDL構築と、生活者と企業の新しい生態系「IDecosystem」の実現を目指す。






