コミュニティコマース、4つの「C」のエコシステムを構築する生活者と企業のこれからのつながり方

サードパーティデータの規制を背景に進行している、企業のファーストパーティデータ豊富化の受け皿として期待が集まるのがコマースとコミュニティです。両者ともに企業やブランド・商品に対する熱量が高い顧客が集うことが共通点であり特長です。そのコマースとコミュニティをより密接につなぎ、マーケティングに活用していこうというアクション「コミュニティコマース」について、その背景や可能性・未来について本記事では整理します。
- コミュニティコマースが求められる背景 ─── 顧客をターゲティングできない環境、ターゲットと呼べない市場が進行する
- 顧客をターゲティングできない環境とは
- 顧客をターゲットと呼べない市場とは
- プラハラードから学ぶ「市場をターゲティングするのではなく、市場をフォーラムとして捉える」姿勢
- コミュニティコマースの力とは ─── 顧客(カスタマー)とクチコミ(コンテンツ)の好循環を作るコミュニティコマース
- コミュニティコマースとは
- カスタマーとコンテンツの好循環を作るコミュニティコマース
- コミュニティコマースはマーケティングアセットの効率化を実現する
- コミュニティコマースの進化と未来 ─── ID統合による深い顧客理解と高い顧客体験のハブとなる
- コミュニティコマースの事例
- コミュニティコマースの課題
- ID統合によって「4つのCによる3つの力」のエコシステムを作る
コミュニティコマースが求められる背景 ─── 顧客をターゲティングできない環境、ターゲットと呼べない市場が進行する
コミュニティコマースが求められる背景から進めていきます。企業に対して熱量が高い顧客が集うコマースとコミュニティの価値が高まり、求められている背景には、個人情報に関わる規制の強化と、企業の態度・姿勢に敏感に反応するようになった生活者の変化、顧客を均一化せずに深い理解に取り組むことが増えたマーケティング環境の変化があります。
顧客をターゲティングできない環境とは
EUのGDPR(一般データ保護規則)など、個人データの取り扱いに対する規制によって、2024年中にはサードパーティクッキーが利用できない環境になると予想されています。サードパーティクッキーは、ユーザーが訪れた異なるWebサイト間でユーザーの行動を追跡し、そのデータを利用してターゲティング広告を表示するために使用されてきましたが、サードパーティクッキーの規制によってこうした巨大プラットフォーマーが保有するデータによる「顧客のターゲティングができない環境」になっていきます。このマーケティング環境の変化に対して、自社顧客のファーストパーティデータを豊富化することで対策しようと大企業から取り組みがはじまっています。「味の素」や「資生堂」などの大企業が、2020年代に入り次々と顧客IDの整備と統合に動き出しているのがその具体的なアクションの一例です。
■こちらの記事もご覧ください
・独占規制やデータ保護法が厳格化し、ネットワークは小さく緊密になる。
・ポストクッキー時代の生活者とのつながり方。サードパーティクッキーの代替策と新しく生まれる生態系とは。
顧客をターゲットと呼べない市場とは
企業のマーケティングに対する姿勢も変化が進みます。マーケティングでは戦術、戦略、ターゲティングなど軍事用語がたくさん使われてきました。2010年代に強まったポリティカル・コレクトネスへの配慮や、2020年代に起こった戦争・紛争によって、差別を廃して平等であることや倫理的であることが企業活動に強く求められるようになりました。「お客様をターゲットと呼ぶこと」は倫理に欠け、差別的なマーケティングであると考えられるようになります。
加えて、旧来のターゲティングがマーケティングを間違いに導いてしまうという示唆もあります。博報堂生活総合研究所が30年以上続けている生活定点調査の2023年のレポートで「消齢化」というキーワードを発表しています。30年の調査データを分析すると、以前は大きかった年代による価値観や嗜好の違いが、実は年々小さくなっていることが分かってきたと彼らは解説します。商品開発やマーケティングの入り口で「年代によるターゲティングをすること」が、間違いのもととなってしまう可能性があります。
プラハラードから学ぶ「市場をターゲティングするのではなく、市場をフォーラムとして捉える」姿勢
では、顧客をターゲティングできない、ターゲットと呼べない市場において、企業はどのようにふるまうべきなのか、その道標をC.K.プラハラードは名著「コ・イノベーション経営:価値共創の未来に向けて」で示してくれています。この本でプラハラードは「市場をターゲットとして見なしてはいけない。市場をフォーラムとして考えよう。」と企業やマーケティングに関わる人たちに訴えます。そして、ターゲットと見なすことと、フォーラムとして考えることによる企業と市場の変化を以下のように説明します。

ターゲティングができない市場となった時、市場をフォーラムとして考え、企業と消費者の垣根を廃して、熱意ある消費者と一緒にブランドを作り、それを広げていくこと。コミュニティコマースが求められる背景とその効果を、プラハラードは2013年に上梓したこの本ですでに示してくれていました。
コミュニティコマースの力とは ─── 顧客(カスタマー)とクチコミ(コンテンツ)の好循環を作るコミュニティコマース
プラハラードの示唆に耳を傾けると、コミュニティ(Community)とコマース(Commerce)をフォーラムとして考え、活用することで、熱意ある顧客(Consumer)とクチコミ(Contents)の良い循環が生まれ、進化していく姿が見えてきます。これこそが顧客をターゲティングできない環境におけるコミュニティコマースの力であると捉えて整理していきます。
コミュニティコマースとは
コミュニティコマースとは、企業やブランドのコミュニティとコマースをシームレスにつなげ、熱意ある顧客がそれらを利用・参加することで、彼らの顧客体験やクチコミやレビューといったコンテンツを商品開発やプロモーションに活用し、コミュニティやコマースの外に広げ、新たな市場を作っていく、生態系(エコシステム)と経済圏(エコノミー)を構築するマーケティング活動です。
興味深い点として、その基点がコミュニティからでもコマースからでも成立する点が挙げられます。コミュニティに熱心な対話が交わされるようになってからコマースに接続する進化のプロセスも、コマースに熱心な顧客が増えてきたタイミングでコミュニティに接続することも可能です。どちらのプロセスにおいても大切なポイントは「顧客が誰であるのか」を理解できる顧客基盤を構築し、コミュニティとコマースの双方の場で深い顧客理解と高い顧客体験を実現する点になります。この理解と体験のバリューチェーンができることによって、顧客が生むコンテンツを、より外部に波及させて市場を広げていくことにつながっていきます。
カスタマーとコンテンツの好循環を作るコミュニティコマース
コミュニティコマースと顧客、顧客が発するクチコミやレビューなどのコンテンツのエコシステムを構造化します。

コマースとコミュニティの間で、顧客や顧客が発するコンテンツが循環することで、商品開発・広告・販促につながる、活用できるアセットが生まれます。
コマースの顧客をコミュニティにつなげることで
高頻度なコミュニケーションによるエンゲージメントの向上
エンゲージメント向上による商品・ブランドの愛用固定
ロイヤルユーザーによる共創・商品開発
商品開発プロセスのテスト・調査への参加
コミュニティで発せられるコンテンツをコマースにつなげることで
商品レビューの豊富化
豊富なレビューのSNSでの活用・流通
インフルエンサーとしての活用
企業からは発信できないクチコミ情報の豊富化
クチコミ情報の広告クリエイティブでの活用
クチコミ情報の店頭クリエイティブでの活用
コミュニティコマースによる顧客とコンテンツのエコシステムは、商品開発・広告・販促などの経済活動・エコノミーを広げる役割を持つようになります。
コミュニティコマースはマーケティングアセットの効率化を実現する
「事業の成長=商品力×販売力×コミュニケーション力」という公式をご存知の方も多いと思います。コミュニティコマースはこの3つの力を効率化するドライバーにもなります。
商品力:商品開発・リサーチにかかるコストの効率化・低減
販売力:チャネル開発・販売促進にかかるコストの効率化・低減
コミュニケーション力:PR・広告にかかるコストの効率化・低減

同時に背景で確認した、生活者の変化やテクノロジーの変化に、商品開発、広告、販促方法を対応させていくための要素もコミュニティコマースのエコシステムに備えられていると感じています。コミュニティコマースはこれからのマーケティングアセットに必要な要件になっていくのではないかと思います。
コミュニティコマースの進化と未来 ─── ID統合による深い顧客理解と高い顧客体験のハブとなる

コミュニティコマースの進化の方向と未来の姿を考えるために、現在のコミュニティコマースの代表事例を「4つのC」と「3つの力」にどのように寄与しているのかという視点で確認します。
コミュニティコマースの事例
IDEA PARK
IDEA PARKは、無印良品が2014年に開設した商品開発プラットフォームであり、コミュニティです。開設当初からコマースの近くに位置し、コマースサイトを利用する会員がコミュニティに積極的に参加する姿が特徴的でした。ここでは、参加者が商品開発のプロセスに深く関与します。企業側からの問いかけに答えるだけでなく、参加者自ら既存商品の改善点を提案したり、廃盤となってしまった商品の復活リクエストを投稿したり、実際にこのコミュニティからヒット商品が生まれたことでも有名です。
コミュニティ:IDEA PARK
コマース:無印良品
顧客:eコマースおよびリアル店舗の顧客
コンテンツ:レビュー、クチコミ、アンケート、商品開発、店頭活用などなど
商品力:顧客に商品アイデアについて問いかけるだけでなく、顧客自らが商品に対するリクエストを投稿
販売力:コミュニティに企業自ら登場し、会話に関係する商品を紹介しコマースサイトへの誘引を促す
コミュニケーション力:商品開発段階から顧客がコミットすることで、発売時の初期トライアーの獲得と、初期採用者からのクチコミ波及の期待値が高い
FOOD52
FOOD52はアメリカで人気の高いフードメディアサイトで、2009年に創設されました。レシピ共有を中心とするコミュニティサイトとしてスタートしましたが、その後コマースへと事業を拡大しています。
コミュニティ:FOOD52。レシピとテーブルウェアを共有するコミュニティになっていて、顧客がオリジナルレシピや食卓の写真を投稿し、他の顧客がそれを試して評価・コメントする。優秀なレシピは「Editors' Pick」に選ばれ、公式サイトで紹介される
コマース:FOOD52ショップ。食器や調理器具、食材などを販売するコマースサイトになっていて、顧客が投稿する食卓の様子をコマースサイトの商品を活用して再現できることが購入の動機となっている
顧客:素敵な食卓を共有したい顧客と、素敵な食卓を再現したい顧客
コンテンツ:素敵な食卓を彩るレシピや、食器や調理器具も含めた写真
商品力:顧客が投稿した評価が高い食卓の写真を実現・再現できる商品をマーチャンダイズする
販売力:おいしそうなレシピ、素敵な食器・調理器具の写真からコマースサイトに直結する
コミュニケーション力:商品の説明ではなく、食卓の写真で訴求する。コミュニティサイトで評価された食卓の写真は書籍として紙媒体でも活用される
コミュニティコマースの課題
再現が難しい
前述のIDEA PARKもFOOD52も、コマースとコミュニティをシームレスにつなげ、顧客とコンテンツによってエコシステムを構築している好事例ですが、同じ取り組みを行っても同じ盛り上がりやエコシステムを作れるとは限りません。コマースとコミュニティのどちらの顧客を中心に考え、それによってコマースにどのような商品をマーチャンダイズするのか、コミュニティにおいてどのようなコンテキストで会話を活性化するのか、商品と顧客の特性に合わせたプランニングが必要になります。
成果が出るまでに時間がかかる
コミュニティコマースにおいては、初期の中心メンバーの活躍が重要です。熱意ある顧客を中心メンバーに据えて、熱量高い空間を作り、そしてその熱をゆっくりと着実に広げていくことが必要になります。急拡大は混乱を生む要因にもなるので、着実な進歩を目指して考えることが重要です。
ID統合によって「4つのCによる3つの力」のエコシステムを作る
エシカルな消費スタイルが浸透し、レコノミーと呼ばれるリサイクルやリユースを前提とした経済が進むにつれて、新しいモノが買われにくい社会になると言われています。そのような社会の到来を前に、企業や商品・ブランドは顧客と永く付き合う、一生付き合うための関係づくりや商品づくりへの挑戦をはじめています。コミュニティコマースは企業と顧客が長期的な関係を築くための強力な基盤となると考えています。コミュニティコマースは1つのブランドに、1つのコマースサイトと、1つのコミュニティサイトがつながる未来に向かっていくのではないでしょうか。
そしてその進化の先には、コマースとコミュニティに加えて、企業が顧客と接点を持つ全ての窓口(例えば、キャンペーンやブランドメディアなど)が、顧客IDを通してつながり、深い顧客理解と高い顧客体験を推進する「4つのCの好循環と、それによる3つの力の効率化」が進んでいくと考えています。
そのような進化に対応するべく、App Unityでは、店舗、ECサイト、コミュニティサイトなど、さまざまなチャネルのログインID・顧客情報・ポイントを独自開発することなく低価格で連携するための「IDソリューション」を提供しています。顧客との永く親密な関係を続けていくための、コミュニティコマースやID統合を支援していますので、活用・検討の際にはぜひご相談ください。
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App Unity IDソリューションとは
店舗・ECサイト・コミュニティ・アプリのID/ファーストパーティデータを低コストで統合・連携。多極化する顧客接点を横断して、ログインID・ポイントの共通化や統合した顧客情報を元にマーケティングに関わる企画・施策実行ができるようになります。
App Unity IDソリューションの特徴
Shopifyに必要な機能を持たせて一元管理。独自開発することなく、開発コストを削減。シンプルかつクイックにID統合・顧客理解・顧客体験の向上を実現します。
ID連携やデータ連携などに関してID統合・シングルサインオン周りでの課題がございましたら、ぜひ一度お話をお聞かせください。お気軽にお問い合わせ・資料請求ください。
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執筆者紹介

舟久保 竜
総合マーケティング会社で23年間、NBメーカーの商品開発・販促企画のアイディア創出のための調査から、クチコミマーケティングの企画・施策実行までの支援を行う。新しいモノが買われなくなるレコノミーの時代の到来を実感し、フィードフォースに加入。統合IDとCDPを活用した人間中心のマーケティングのためのSDL構築と、生活者と企業の新しい生態系「IDecosystem」の実現を目指す。





