マテリアル・パスポートが静かに進行する ── トレンドの原動力を切り取る Lens of Trends 解説記事

本記事はOSINTとPEST分析を通して気づきを得たトレンドについて発表するマーケティングセミナー「Lens of Trends」で取り上げたトピックの解説記事です。セミナーでは毎月9つのトピックを取り上げています。セミナーのアーカイブ動画や、詳細データを掲載している講演資料の請求も承っています。本ページ下部のリンクよりご請求ください。
マテリアル・パスポート、オランダの建築家トーマス・ラウ氏が考案・提唱
マテリアル・パスポートは、オランダの建築家トーマス・ラウ氏が考案し、建築分野で先行して実践が進んでいます(参考記事:Circular Economy Hub)。素材や原材料のひとつひとつにIDを付与し、経済システムの中で永遠に循環させていこうという試みです。例えば、建築物が解体されたときに、IDを付与された資材は登録されているプラットフォームからその価値が算出されて、次の建築物に使われるようになります。このように循環を前提とした資材の使い方、建築物の作り方が特徴となっているのがマテリアル・パスポートです。2025年に開催される大阪・関西万博のオランダパビリオンの建築もマテリアル・パスポートが採用されています。
マテリアル・パスポートの考え方:「人類は地球上の一時的なゲストに過ぎない」
このマテリアル・パスポートの前提となる考え方が素敵なので紹介いたします。
人類は地球上の一時的なゲストに過ぎず、有限な資源に対する責任を持つべきである
廃棄物はアイデンティティーをもたない素材の集合体であるが、パスポートによって素材にアイデンティティーを付与し、資源としての価値を回復させる
マテリアル・アズ・サービスを目指す
製品の所有権は生産者にあり、消費者は生産者から製品をいわば借り受け、サービス対価を支払うビジネスモデルである
これまでの原材料から素材、製品へと価値が創造されていくバリューチェーンに、製品から素材、原材料へと価値を保存しながら元に戻してゆく「価値保存」のバリューチェーンを加える
素材・マテリアルは一時的に借りているもの。その前提にたち、不必要になったら返還して次の循環につなげていく、資源を使うことに対する責任を持つ考え方です。
マテリアル・パスポートの事例:「Mace & Waterman Edenicaプロジェクト」
このマテリアル・パスポートを社会実装していこうとロンドンでプロジェクトが進んでいます。エデニカプロジェクトといいます。このプロジェクトを通して、2023年10月にマテリアル・パスポート・フレームワークを発行し、プロジェクトから得た経験をもとに、より標準化されたリユース建材市場の確立に向けて関係者や行政へ働きかけを強める狙いです。建設企業のMace Groupとコンサルティング企業のWaterman Groupが主導し、ロンドン市内の約1万3000平方メートルの面積を有する13階建ての商業オフィスビルに実装し、建物の運用段階で排出されるオペレーショナルカーボンは正味ゼロとなるように設計し、解体の容易さも追求します。ヨーロッパの強さであり、したたかな部分ですが、こうした世界的に認められる先進的な取り組みにいち早く着手し、先行者利益をしっかりと獲得する。そんな基盤になり得るのではないかと思わせる、マテリアル・パスポートへの取り組みの紹介でした。
※本トピックは「Lens of Trends:24年6月号」で取り上げました。資料やデータの詳細をご覧になりたい方は、以下よりご請求ください。
Lens of Trends 資料請求

本記事に関する詳細データ等を掲載しているマーケティングセミナー「Lens of Trends」の講演資料およびアーカイブ動画をご覧いただけます。ご希望の方は以下のフォームからお申し込みください。
【無料】S-DL診断アプリをお試しください

貴社の業種、提供商品・サービス、課題、理想とする姿を入力いただくと、社会の変化に配慮したサービス・ドミナント・ロジックの構築に向けた施策内容の提案や、施策に即した実際の事例を紹介する「S-DL診断アプリ」を試験公開しています。ご登録が必要となりますが、無料で実施できますので、ぜひお試しください。
category:
関連セミナー
関連記事
執筆者紹介

舟久保 竜
総合マーケティング会社で23年間、NBメーカーの商品開発・販促企画のアイディア創出のための調査から、クチコミマーケティングの企画・施策実行までの支援を行う。新しいモノが買われなくなるレコノミーの時代の到来を実感し、フィードフォースに加入。統合IDとCDPを活用した人間中心のマーケティングのためのSDL構築と、生活者と企業の新しい生態系「IDecosystem」の実現を目指す。
























