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デジタル化したけど、DXできていない日本の教育実態がわかる ── トレンドの原動力を切り取る Lens of Trends 解説記事

本記事はOSINTとPEST分析を通して気づきを得たトレンドについて発表するマーケティングセミナー「Lens of Trends」で取り上げたトピックの解説記事です。セミナーでは毎月9つのトピックを取り上げています。セミナーのアーカイブ動画や、詳細データを掲載している講演資料の請求も承っています。本ページ下部のリンクよりご請求ください。

2023年度にデジタル教科書の整備率が87.4%に急増

全国の公立学校における2023年3月時点のデジタル教科書の整備率(教科や学年を問わず1種類でもデジタル教科書を使用している割合)は、22年より51.3ポイント上昇し、87.4%となりました(参考:教育新聞)。整備率が急増したのは文科省の普及促進事業でデジタル教科書が提供された小中学校が中心で、義務教育学校の整備率は100%になりました。コロナ禍を経て、GIGAスクール構想の一人一台端末環境が早期に実現したことも後押しとなり、デジタル教科書の提供と普及も急速に進みました。24年度を「デジタル教科書元年」と位置づけ、小中学校の希望校に英語のデジタル教科書の無償配布をはじめます。想像以上に広くデジタル教科書の利用機会が広がっています。

エストニアではデジタル教科書を1ヶ月に30回更新する

世界の先進的なデジタル教科書の活用方法としてエストニアの事例を見てみます。エストニアは2018年の国際学力テストで上位にランクインし、世界を驚かせた教育に力を入れる国です。デジタル教科書という環境を活かし、教科書を制作する会社は問題の使用頻度や回答内容のデータを収集した上で分析し、演習や章立て、動画・画像などの内容を頻繁に更新しています。その頻度は、なんと1ヶ月に30回だそうです。生徒と教科書が互いに進化していく姿が見えるようです。今後は世界でデジタル教科書の普及が進み、周辺市場が活性化し、こうしたイノベーティブな取り組みが増えていくことが予想されています。こうした柔軟な教科書の変化に対して、欧米では以前の規制を撤廃して対応しています。エストニアも2000年代に教科書の検定を廃止したことが、こうした柔軟な対応につながりました。

日本のデジタル教科書は「ほぼ4年に1度」更新されるのみ

改めて、日本のデジタル教科書の状況を確認します。前述の通り、教科書のデジタル化は進みましたが、本当の意味でのDX(デジタルトランスフォーメーション)はまだできていないようです。その理由は法律にあります。日本の法律では、デジタル教科書は内容からレイアウトまで「紙と同じ」と定められています。内容に影響する学習指導要領の改訂はほぼ10年ごと、国による教科書検定はほぼ4年に1度しか行われず、社会の最新情勢を取り込むのが難しい状態です。これらを鑑みると、小学校で生成AIに関する記述が登場するのは最速で2028年度に使用が始まる教科書からという見通しです。

地域ごとに決められた教科書を使い、毎回ほぼ同じ発行会社が検定に臨む。規律や画一性の重視は全体の教育の質を保つ効果が見込める半面、時代の変化に合わせた斬新な教科書は生まれにくい状況です。世界と足並みをそろえるか、独自に進化する道を歩むか。デジタル教科書の本格的な普及を控えた日本は再考を迫られているのではないでしょうか。

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執筆者紹介

舟久保 竜

総合マーケティング会社で23年間、NBメーカーの商品開発・販促企画のアイディア創出のための調査から、クチコミマーケティングの企画・施策実行までの支援を行う。新しいモノが買われなくなるレコノミーの時代の到来を実感し、フィードフォースに加入。統合IDとCDPを活用した人間中心のマーケティングのためのSDL構築と、生活者と企業の新しい生態系「IDecosystem」の実現を目指す。

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